統計的デザイン意思決定からのハイジャンプ

 BIM 総合演習 立命館 大学 建築都市デザイン学科 建築情報学 系授業 3回生前期(2020)


 統計的デザイン意思決定からのハイジャンプ 
– 良いコンセプトモデルをマイニングする –


□ 課題概要 

BIM・建築情報技術の主目的でもあるフロントローディグを想定し,コンセプトモデルのデザイン意思決定の精度を向上させる。そのためにペアで10案以上を作成し,定量的評価値の統計処理からコンセプトモデルを選定する。
また意思決定を根拠にコンセプトモデルの選定の後は自信を持って大きくデザインを飛躍させる。

 背景①:「数の力をデザインに -数の海で溺れないために-」

BIM・Iotが進むと建築都市に関する数が大量に発生する。 建築に関する属性データの集合,シミュレーション結果,センシングデータ,などである。
デザイン行為の上流側に位置する人間は,この数の洪水の中,意思決定を行う必要がある。これからの建築都市デザイナーは,様々な分野から提供された数の海を泳ぐ知識とスキルが必要だ。 勿論,エンジニアの支援はあり,ある程度まとめられては来るだろう。(来ない時もある) 但し,エンジニアは「厳密さ」も使命としており,「ようするにどういうことなの?」に対しては条件付で回答する。 そのエンジニアの話す内容を理解するためにも,ある程度「分野と統計に関する知識とスキル」が必要だ。
加えて,簡易シミュレーションをデザイナー自身が行うことも出来るようになってきた。 この場合はデザイナー自身が解釈もしなくてもはならない。 数の力はデザインを飛躍させる原動力・バックグラウンドともなる。これを駆使するデザイナーが活躍しより求められるようになるだろう(おそらく)。
来たるBIM時代,デザインセンス(スキル)という概念には数やプログラミングに関する技能が含まれるだろう。この課題では以上を先取りして,建築・建築行為を高度化するエンジニアリングとその使いこなしの思考に挑戦しよう。

◇ 背景②:「意思決定者としての建築家をコロス高度化」(助ける)

設計案の最終決定の場面では,施主や様々な分野の専門家での合意形成が行われる。
言うまでもなく,この合意形成は非常に重要な意思決定である。そのため綿密な議論が交わされる(デザイン演習なら自身との対話,教員とのエスキースだ)。この合意形成の場には強い意思決定権を持つ人物もおり,それが建築家(デザイン演習なら教員?(では駄目))であることもある。しかし,建築家の先導は良い意思決定と言えるのだろうか?,プレゼンに不思議な説得力があるだけではないだろうか?
この疑問に対する正解はないが,おしゃべりがうまい人・説得力がある人がいる分野が決定権をもつ,コスト優先,コンセプトとのストーリ上の対応,ではない意思決定を体験してみよう。
幸い,BIM・建築情報技術を用いると,仕事の初期段階で,様々な案に,様々な評価を数値として得ることができる。これらの数値を並べてみんなで相談する時,もう一手間加え,統計的な知見をベースにデザインに関する意思決定をしてみよう。

このようなデザインの意思決定は,極端に言うと「意思決定者としての建築家をコロス高度化」という意味でもある。 同時に,仲介役のようになって奔走する建築家を,本分とするデザインに集中させてあげる,という意味でもある。

◇ 課題内容:

 題材:ランドマークとなるソーラーパネルタワービル 

定量的なデザイン意思決定を誇張的に体感するために「指定敷地のランドマークになるソーラーパネルで覆われた超高層ビルディング」を題材とする。ランドマークとして相応しいデザインであり,発電量が高く,風から受ける圧力が小さい形態をデザインしよう。
定量的なデザイン意思決定の体験以外にも,一点突破型の大胆なデザインの創生(総合型ではない)も課題の意図である。ある視点に対する深い思考がデザインの切り口になることはしばしば起こり得る。敢えて特定視点に絞るが,その視点についてはシミュレーションを用いて精緻に検討し,その検討を根拠(自信)に大胆にデザインする,ということである。この意図も意識して欲しい。

 場所:グランフロント周辺の指定敷地 

  • 後述の配布データを参照
  • 理由があれば変更しても良い。

 評価関数:

  1. 主観的評価(自己評価)
    • 任意の項目(美観性など)に対する10段階評価(高いほど良い)
    • メンバーの平均値とする
  2. 主観的評価(他者評価)
    • 上記と同じ項目に対する10段階評価(高いほど良い)
    • 10人以上の平均値とする(人数は授業なので少なめ)
  3. 環境的評価(日射熱取得量)
    • シミュレーションにて取得した年間日射熱取量の総量
  4. 風圧力
    • シミュレーションにて取得した風圧力の総量

課題意図を反映し上記に示す評価関数以外(使われ方・用途・構造・実現可能性)は任意とする。

 大まかな手順:

  1. 指標1から4をエクセルに入力しcsv形式で保存(配布書式を厳守)
  2. Rを使って一連の統計処理を実行(標準化・合成・はずれ値)
  3. 選定とレンダリングなど
  4. プロセスも含めてプレゼン化(A1を想定)する
    1. 例1例2
    2. 今回の課題は新しいプロセスの体験と使いこなしが主なのでプロセスのみを指定している。プロセス以外のコンテンツは各自で工夫しましょう。
  5. 箱ひげ図(50行目)とスミルノフ・グラブス検定の視覚化(86行目)の重ね合わせ,サンプルナンバーの追加はイラレなどで各自行うこと。Y軸の同じ値がずれないように注意。

 関連ファイル:

 提出日時・提出物:

  • この課題はペアで取り組んでください。(完成度の向上が意図です)
  • 期日:対面授業の開始時まで
  • 提出物:pdfとツイート
  • 提出方法:pdfはmanabaから,ツイートのハッシュタグは#建築情報20_e

 参考サイト:

  1. CTBUH/実施系
  2. CTBUH/プロジェクトも
  3. Skyscraper Competition
  4. 謎のビルプロジェクト

以上の意図と一連の説明記事(長い)


大変+このような意思決定が将来訪れるかは分かりませんが,これまでとは違った視点の体験として頑張ってください。意欲作を期待しています。

なお提出後には講評会の代わりにはなりませんが共有の提出物の共有ページを作ります。また講評会の機会も作りたいな,とも思っています。

統計的デザイン意思決定からのハイジャンプ” への5件のフィードバック

コメントは受け付けていません。