論文レビューの書き方

論文レビューといっても,何を書けば分からないし,何を読み取ればいいのか分からない,,,そんな感じだとと思います。
普段見聞する文章と違うので最初は戸惑いますが,下記の要点を読み取ればオッケー,意外と簡単です。
ですので,慣れればけっこう早く一つの論文から学習できるようになります。
なお知らない用語を調べることは必須です。


<レビュー?何のために?>

レビューは研究・デザインを行う際に必ず行う有用な行為です。行う理由は「巨人の肩にのる」という有名な言葉に集約されています

ピンと来ないかもしれませんが「巨人の肩に乗り,より広く,より遠くを見るため」,要するに,単純に過去の成果に学びその上で自身の研究・デザインを行うため,ということです。
いきなりテーマを作ったり,研究計画・調査方法・分析方法を構築するのは難しいですね。まずは興味のある研究を参考にする所から始めましょう。
「この論文のような研究がやりたい!,これを空間化してみたい!」と思うものが見つかれば一歩前進です。レビューで引用されたり参考にされたりする事は著者にとって大変嬉しい事です。論文は引用され誰か(若しくは自分)に活用して貰う事が目的です。どんどん参考にしましょう。

また他にも「車輪の再発明」という言葉もあります。「既に確立した技術や方法,既知の事実や知見は学ぶものであり,研究はその先を目指す」という意味です。
先に進むために先人と同じ道を辿ることはあるでしょう。しかしその場合でもその道自体を探索することはせず,先人の道を辿ります。その上で,具体的な自身の取り組みを決めます。このように先に進むのが人類の道でしょう(大袈裟な言い方ですが本当のことです)。この「先」であることを主張する記述が,論文の位置付け,独自性・新規性と言われる内容に該当します。
またこの主張が有無が,かつて夏休みに行った自由研究と研究の大きな違いでしょう。
この授業内では厳しく追及しませんが,卒業論文に取り組む場合は,研究室によっては乗り越えるべき最初の壁となる事でしょう。
卒業制作でも同様です。卒業論文と同じく自由研究ではありません。やはり既往に対してどう対峙するかが重要です。ただ,凄く頑張った自由研究に過ぎないのでは,,,としか理解できない内容の方が多い実情には複雑な思いです。
少し話が脱線しました。上述のプロセスは多くの場面で応用が可能です。自分の個性(専門性)をどう打ち出すかと言った場合でも同様ですので,しっかり学びましょう。

ということで,自身のテーマを探すため,成果に対して正当な評価が得るため,社会におけるテーマの位置付けを明確するため,レビューを積極的に行いましょう。

<レビュー?何を書けばよいの?>

■ レビューには下記が含まれている事が大切です。

  1. 誰かどんなテーマを何に着目して研究を行っているか。(研究目的・調査目的)
  2. どんな手法を用いているのか。(調査手法・分析手法)
  3. どのような内容について成果を得ているのか。(結果・まとめ)(内容の中身についても簡単にふれる)
  4. さらに内容を高度にするために特に重要な批判的考察(ただの難癖とは違う,課題の羅列とも違う)

■ レビューの型の一例

  1. ○○らは1)AについてBに着目して研究を行っている。
  2. Cのような方法を用いて調査を行い,Dにより分析を行っている。
  3. その結果,EについてFという考察を得ている。
  4. ただし発展的な課題もあるそれはG。

■ 実際にこの論文に内容を入れると下記のようになります。原稿pdfが見られない場合はこちらから

  1. 山田らは1)超高層集合住宅の集住体の計画手法の構築を研究目的とし,居住者の地域環境に対する認知について研究を行っている。
  2. 地域住民を対象とし,圏域図示法とよばれる地図を用いた現地アンケート調査を行っている。分析においては,まずアンケートから得られた認知領域図と呼ばれる環境認知を図化した物から認知領域の広がりとその構成要素を明らかにしている。そして,認知領域図から得られた指標を用いて数量化Ⅲ類により環境認知を視点として地域住民の類型化し,その特性について考察をしている。
  3. 分析及び考察においては,環境認知における「私のまち・身近な水辺・身近な緑地・にぎわい」の認知領域の広がりの傾向と構成要素を把握している。またその形成要因として,a)領域面積・可視性・構成要素の属性から成る「可視性にもとづく認知領域の広がり」b)居住年数・構成要素数から成る「時間変化による空間構成要素の認知」c)重複度・近隣住民としての意識・にぎわいから成る「にぎわいを中心とする認知領域の複合化に基づく近隣住民としての意識の形成」を抽出している。そしてその軸によって類型化され類型特性を分析している。考察においては居住階に着目しており,住年数5年以上の居住者において,変位階層(第一変位層8~12階,第二変位階層32~36階,第三変位階層19~24階)が形成される事を把握し,変位層間の居住者の認知特性について考察している。
  4. 上述は階層によって異なる居住者の周辺環境に対する環境認知を明らかにした価値ある知見であるが,発展的な課題もある。特に重要と考えられるそれは住戸の向きである。住戸が川に面しているか,内陸に面しているかという,日常において視覚的に認識する眺望は環境認知に強く影響していると考えられる。今後にこの点も加味した考察が期待される。 

下記も必ず記述します。
1)山田悟史,大内宏友:超高層住宅の集住体における居住者の環境認知に関する研究,日本建築学会計画系論文集 第73巻第630号,pp.1749-1757, 社団法人日本建築学会,2008年8月

 


書き方のイメージが掴めたでしょうか。勿論テンプレートが当てはまらない場合もあります。
また実際に原稿に載せる分量はもっと少ないですが,理解の自己確認のためにはこれくらは書いた方がいいでしょう。逆に,特に対象になる論文についてはもっと細かくレビューする事もあります。
ただ分量が多いのは冗長なだけですが,理解を確かにするために,この授業では1論文当たり500字程度を目安に作成してください。

最後に対象にした論文を自分が理解できているかの確認方法です。

全ての図表を原稿を全く見ないで説明できる

少なくとも発表する論文に対してはこのようなレベルの理解で準備してください。