この研究の一部を「Deep Learning を用いた デザイン AI の作成と検証 -街並みと建築物外観の画像生成を対象に–」として日本建築学会計画系論文集に採用して頂きました。公式,プレプリント(2020/01/08追記)
現在,二人の所属生が「Deep Learningを用いた画像生成 AI の建築都市デザイン分野への適用可能性」に取り組んでいます。
大野耕太郎 くん(M1)「目的に応じたジェネレ−ティブデザインAI の体系化」
池之上慎吾 くん(B4)「ボリュームモデルに任意のデザインソースのデザイン性を反映させるファサードデザインAI」
以前に紹介した通称「コルビジェネレーター」以降も取り組んでいる「ジェネレーティブ デザイン AI 」をテーマにした試行です。
嬉しくも頼もしくも,暗中模索の仲間が一人増え,二人になりました。
その二人の成果として,視覚的に表現できるコンテンツが溜まってきましたので,紹介します。
なお今回は一部の方にご好評だったダジャレの素敵な命名はありません。
大野くん・池之上くん:先生,紹介HPは?
山田:いや,どうしても名前が,,,
大野くん・池之上くん:そういうのは考えても駄目です。
山田:はい。
では,紹介します!
研究目標
「AIによるデザイン支援」,いわば「人とAIの共創」を目標に掲げ,コンテンツ生成AI(敵対的生成ネットワーク「GAN))のデザイン分野への適用可能性を試行しています。
その目標は,
-
デザイン案群の生成
→ 原案となるデザインパターンの大量かつ高速な生成によりデザイン発散の支援
-
AIにとっては計算可能だが,ある人にとっては想定外なデザイン(計算可能な想定外)の提示
→ 人が認知しているデザインパターン思考の拡張・インスピレーション・異化作用の支援,超認知世界への開眼
-
人がデザインソースを選び,AIがデザインを生成し,人がデザインを選択・プレゼンする,というデザインプロセス
→ 「人とAIの共創」という新たなデザイン環境
です。
*注
この紹介では,アイデア・デザインとは意識・無意識に関わらない既存の組み合わせ及び組み合わせからの気づきである,と解釈しています。
内容の紹介(概要のみ)
ということで,試行を紹介します。
今回も,何をしたのか,学習モデル,学習データ,などの詳細については後日。
ここでは,視覚的に試行結果だけ紹介をします。
僕たちのコメントもこれまでの記事と重なる部分が多いので出来るだけ割愛します。ちょっと素っ気ない感じになりますが。
GANの概略も情報が増えてきましたので割愛します。すみませんが自前の解説HPや原稿へのリンクもありませんので。
ただこの原稿「Deep Learning を用いた印象評価推定AI の作成と検証」の1章に後半に少しだけ紹介があります。建築学会の会員ではない方はこちら
デザインの再生 :
学習データのデザイン性を学習し,厳密に同じではないけど類似のデザインを再生する試行。デザイン生成に必要な前段です。
街並み
和風と西洋風の街並みのデザイン性を学習したAIによるデザイン再生を意図した結果
上部が学習画像の一部,下部が生成画像の一部です。
研究として評価実験もしていますが割愛します。出来栄えについては皆さんそれぞれに感じて頂ければと思います。
街並み(色彩(素材)のみ)
街並みの色彩(素材)というデザイン性のみを学習したAIによる,デザイン再生を意図した結果(線画変換)
インプット画像は学習データには含まれていないとはいえ,写真を線画化した線画なので凄い精度になりました。
学習画像の紹介を割愛していますが分別できないほどです。
建築物の外観(コルビジェ)
建築物の外観のデザイン性を学習したAIによる,デザイン再生を意図した結果
再生終わり
いかがでしょうか?
僕らとしては,いずれも,類似性が高い再生結果と感じています。これはデザイン性を数学的に組み合わせるための前提を満たした,ということです。
それでは,生成です。
デザインの生成 :
学習データのデザイン性を学習し,デザイン性を継承した新たな(別の)デザインを生成する試行
街並み(色彩(素材)のみ)
異なる画像間の関係性を学習するAIにより,和風の色彩(素材)というデザイン性のみを別の街並みに適用するデザイン生成の結果(線画経由)
インプットを元にAIが生成したデザインがアウトプットです。学習画像の紹介は割愛。
色彩については和風に生成できている気がします。素材感の生成が怪しいのが課題でしょうか。
この試行の想い
集合知として形成された「街並み」という文化・歴史のデザイン性をAI(GAN)という再生可能な新たな保存次元を使って将来も失うことなく活用したい。
例:〇〇みたいな街並みにしたらどうなる?
例:〇〇の街並みのらしらって?
建築物の外観(コルビジェ)
複数の異なる作品のデザイン性を学習するAIによる,デザイン(ベクトル)演算を用いたデザイン生成の結果
全て作品名に応じた生成画像です。学習画像の紹介は割愛。
こちらも,研究として評価実験をしていますが割愛します。出来栄えについては皆さんそれぞれに感じて頂ければと思います。
この試行の想い
先人の優れたデザイン性をAI(GAN)という再生可能な新たな保存次元を使ってつ将来も失うことなく活用したい。
例:〇〇のデザイン性を自身のデザインに取り入れたい
例:〇〇のデザイン性って?
例:〇〇の新作を妄想したい
建築物の外観(コルビジェとザハ)
異なるデザイン性の関係性を学習するAIを用いて,建築物の外形というデザイン性を保持しつつも異なる立面を持つデザインを生成した結果
インプットを元にAIが生成したデザインがアウトプットです。学習画像の紹介は割愛。
外形と立面というデザイン性を組み合わせて新たな(別の)デザインを生成できているように見えます。出来栄えはいかがでしょうか?
この試行の想い
AI(GAN)という再生可能な新たな保存次元を使って,複数の先人の優れたデザイン性から新たなデザイン性を見出したい。
例:〇〇と〇〇を取り入れたらどんなデザインがあり得るの?
例:〇〇と〇〇とデザイン性って?
例:時間も場所も超えた〇〇と〇〇の共作を妄想したい
建築物の外観(シンプルモデルへの非建築物の転写)
異なるデザイン性の関係性を学習するAIを用いて,シンプルなCGモデルに布のデザイン性を転生させたデザイン生成の結果
インプットを元にAIが生成したデザインがアウトプットです。学習画像の紹介は割愛。
この結果,狙いが分かりづらいかもしれませのでコメントします。
僕らとしては,人の意図(柱のスパン(方向))に応じて生成できたように見える点に今後の可能性を感じています。
この試行の想い
因果関係のプリセットが不要なAI(GAN)という学習器の助けを借りて,非建築物から建築の優れたデザインを見出したい。
例:非建築物から建築を構想したい,〇〇くらい素敵に
例:非建築物から建築の構想って?
建築物の外観(シンプルモデルへの地域性の転写)
異なるデザイン性の関係性を学習するAIを用いて,シンプルなCGモデルにチェニジア「クサール」の伝統集落のデ ザイン性を転生させたデザイン生成の結果
インプットを元にAIが生成したデザインがアウトプットです。学習画像の紹介は割愛。
この結果も狙い分かりづらいかもしれません。
やはり僕らとしては,人の意図(柱のスパン(方向),水平方向の領域分割)に応じて生成できたように見える点に着目しています。
この試行の想い
因果関係のプリセットが不要なAI(GAN)という学習器を使って,地域性を表現する優れた建築デザインを見出したい。
例:何かを強意に表現する(de-signの直訳)建築物を構想したい,やっぱり○○みたいに素敵に
例:何かの表現としての建築って?
デザインの生成終わり
いかがでしょうか?
アイデア・デザインとは意識・無意識に関わらない既存の組み合わである,という解釈においてはデザインを生成できていると僕らは解釈しています。
良い・悪い・創発的か・模倣からオリジナル性への発展またそれをどう確認するのか,などが今後の課題です。
終わりに
パラパラしていますが以上で紹介終わりです。
いかがでしたでしょうか?
楽しいですが苦戦しております。
研究全体の大義は「雲海を切り弘く」,この取り組み,新たなデザインの創成,建築家コロス,への着実かつ大胆な二歩目,になったのでしょうか。
僕たちとしては,
何をどうしたい時にどのGANを使い,何にどの程度の精度を発揮するのか,
が何となく見えて来た気もします。
ただ,またまだ体系化には試行が必要です。
体系化は,研究者の大切な役割の一つですので,今後も試行を続けます。
なお今回はデザインの継承を評価にしているので,そのような画像を紹介しています。
他にも,AI的にはデザイン性を継承しているけど,僕らにとっては???な画像も沢山生成されています。
もしかすると,人にとっては???なそれらが大切なのかもしれません。機会を作って紹介したいと思います。
試行を続けるに当たり,色々な課題を感じています。
その一つは,「デザインとは何か?」という深遠な問いに対する太古から続く問答との対峙です。
例えば,空間に対する美観性尺度,共通理解として認められている尺度規定があるのでしょうか?
取り組んでいる研究が山ほどあるのは知っているのですが。。。
元々,感性を変数に持つパラメトリックデザインをしたくて,心理・認知に取り組んできたのですが,AIを目的とするか否かに関係なく,学術的な知見が明確ではない気がします。
加えて,「自分であれ他者であれ,人の評価は人が一番分かっている」という前提が高い壁のような気もしています。分かっていないと思うのですが,,,
人が気付きを見出すか,異化作用につなげられるか,という点が「人」にかかっているのも課題です。人を拡張するような,気付きを促すようなAIとは何なのででしょうか。
人が気付かなければ,という課題「ヒューマンイズボトルネック」というやつですね。
この雑感のように試行している最中に感じたことも残し,「AI研究を通じた人・建築の探求」もしていきたいと思います。個人的にはこれも楽しい。
つい余談が長くなってきました。
何をしたのか,学習モデル,学習データ,などの詳細については,今回も日本建築学会 情報シンポ2019にて大野耕太郎くん,池之上慎吾くんがそれぞれ発表予定です。
ともかく,今後の研究に向けてリアクションを貰えるように今年も頑張ろう!
なお原稿の公開や詳細の追記は定かではありません。
最後に,なにかステキな命名が浮かんでおられましたらぜひご教示ください。
謝辞
紹介の一部に実施に際して「株式会社 梓設計 清水将矢氏・岩瀬功樹氏・渡邊圭氏・野下啓太氏」にご助言を賜りました。記して深謝を申し上げます。
余談続きますが,研究室からは他にも発表します。
VR建築理論,ヒューマンコンピューターインタラクションを使った感覚継承,マルチエージェント,ネットワーク問題,
などです。
どれもぜひ多くの方に見て頂きたい,と思っている研究です。
そちらの紹介HPも作りたいと思っています。
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