AIの衝撃:期待と葛藤を抱えて進む

AIの衝撃:期待と葛藤を抱えて進む

この投稿について

日本建築学会 建築雑誌 3月号の特集「AIの衝撃: 期待と葛藤を抱えて進む」山田パートのWEB用記事です。

  • 直接この記事にお越しになった建築学会の会員の方:この記事は建築雑誌の紙面でご覧いただける他の方の内容の頭出しです。紙面もぜひご覧ください。
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関連する図表に加え,実験結果に関する皆さまへの「質問」と「回答の共有」のセクションもご用意しました。
読者の皆さんと広範に期待と葛藤を論考したいからです。
設問は,実験結果に対する印象を「ポジティブ」と「ネガティブ」で敢えて二項対立に問う設問と,その理由をうかがう設問です。
別の方の回答や開催済みのシンポジウムで頂いた回答もご覧いただけます。
「抱える」機会としてぜひご参加ください。

なおご入力いただいた内容は原則そのまま公開させて頂きます。お名前やご所属をご入力頂いたも構いませんが,公開されることご留意ください。ただ不適切な発言を主として著者の判断で回答内容の一部を削除・修正することがあります。

御礼・備考:

調査・実験に協力して下さった方々に御礼申し上げます。なお本サイト上での回答には下記のシンポジウムで賜った内容の一部を転記させていただいております。深謝申し上げます。

(2024/03/08 文章も掲載)


1. 特集の序章として

この瞬間にも新たなAIが社会実装されている。人類の成果物を広範に学習した深層学習を基盤とする大規模なAIと社会の関係が,唐突に新しい段階に進み,啓蒙期を飛び超えて普及期に入ったとさえ感じる。社会的な戸惑いや不安も強い。建築分野でも同様である証左のひとつとして,近年に建築情報学会が誕生した。偶然のようで必然である。本特集は,節目とも言える今,建築学が期待と葛藤を抱えていかに生成系AIと歩めるかを示唆することを意図している。賜った内容の頭出しとして,まずは筆者の期待・危惧・葛藤を記したい。

2. 不確実性と説明不可能性の社会受容に対して

ChatGPTに対する筆者の最大の驚きは社会の受容姿勢の変化である。悪い表現を用いれば「手のひら返し」とも感じるほど驚いている。無料かつ簡単に利用可能な高性能な生成AIの普及以前には,深層学習に高い期待が集まりつつも, AIの説明可能性の低さ(ブラックボックス問題)・責任の所在・不確実性が広く問題視されていた。建築学においても同様であった事は,筆者も参画した「2021年 日本建築学会 AIの利活用に関する特別調査委員会 報告書」1)からも伺える。現在もこれらの技術的課題は残っている。例えば自然言語処理の研究者にとって,学習データと学習構造はある程度は説明可能である一方で,ある規模の学習量とネットワークサイズを超えた時にみせた精度向上は研究者にとっても驚きとともに受け止められ,その根拠の明瞭な説明は困難なことが代表的である。しかし,2021年以降のわずか3年程度のうちに,依然として根拠や責任や説明困難さといった課題は残存しているにも関わらず,ChatGPTが社会に広く受容されたのである。AIの基礎と課題・展望について示唆を賜った「川原 圭博」氏のインタビューでは,上述についてもお聞きすることができた。参照していただきたい。

ここでは特集の序章として受容姿勢の変化に対する期待と危惧を考察したい。この変化は,AIを契機とした「不確実性や説明不可能性の受容という社会変化の兆し」とも言えるだろう。人間の説明可能性への疑問と,説明不可能な対象にこそAIの可能性を大いに感じる筆者は,このような受容姿勢に大きな喜び・期待を感じつつ,建築学に波及する影響に期待と葛藤を感じている。

まずは「期待」である。建築に要求される説明責任は過去より強いと感じている。この現状に対して,長期的な期待を感じている。建築がもつ総合芸術としての可能性や文化的な多様性に,説明責任によって押し留められている部分があるとするならば,建築の説明可能性を超えた魅力(量的おろか言語化も困難な側面)がこれまで以上に受容される,という期待である。この期待については全文が公開されている前述の報告書1)の筆者の章も参照していただきたい。またこの期待は AIと親和性が高いメタバースでも高い。メタバースの空間は現実と比して刺激が低次元化しているせいか,飽きるのが早いと感じている。自由度の意味でも,インタラクティブ性が高い一期一会な建築家としての役割がAIには期待される。このような空間とAIについては,先行するゲームデザインの観点から「三宅 陽一郎」氏に,建築における図面や時間の観点から「加藤 耕一」氏に示唆を賜った。参照していただきたい。

次に「危惧」である。昨今はAIと対比的に人らしさが語られることも多い。本項の文脈では,人が理解可能なように説明できる(してくれる)ことは人らしさと言えるだろう。AIのさらなる展開により,人は性として,人らしさをさらに思考し,また求めるだろう。危惧は,その思考において上記の解釈が過度に進み,人の思考の関与が深い建築にはこれまで以上に説明責任が求められることである。同時に,過度に説明責任から解き放たれ,建築の総合性という困難さでもあり魅力である面が薄れる可能性があることには「葛藤」も感じている。このような期待と葛藤については早くから構造分野で議論されている。「木村 俊明」氏の論考を参照していただきたい。

3. AIと人の共創に対して

本項では,簡単な実験結果を紹介した上で期待と危惧を記したい。AIと人の共創には主に4種類があると考える。

  1. 精度の良いAIとの直接的な対話
  2. 精度の悪いAIとの直接的な対話
  3. 精度の良いAIとの間接的な対話
  4. 精度の悪いAIとの間接的な対話

ここで「精度の良い」は訓練を積んだ人間のようという意味であり,「直接的な」は解釈しやすいという意味である。まずはA)の考察のために行った実験を紹介する。実験については,「質問」と「回答の共有」のセクションをご用意した。読者の皆さんと広範に期待と葛藤を論考するためである。実験結果に対する印象を「ポジティブ」と「ネガティブ」で敢えて二項対立に問う設問と,その理由をうかがう設問である。別の方の回答や開催済みのシンポジウムでいただいた回答もご覧いただける。「抱える」機会としてぜひご参加ください。

実験1概要: A)精度の良い生成AIとの直接的な対話(参照)の検証

コンテンツ生成AIは生成が人間らしいという印象を超え,上手とさえ理解され始めている。当然ながら上手さには多様な評価軸があり,時代とともに他ならぬ人間が変化させてきた。それらの出力を膨大なデータとして学習したコンテンツ生成AIが,あるクエリに対応する出力を,データの確率分布の期待値が高い付近を多く出力していると仮定するならば,人間の出力の期待値がその付近に安定するという期待と同時に,過度にその出力を規範(上手)とする度合いが高まると,人間の多様性(とその変化)に減衰が生じるという危惧がある。これを検証したのが実験1である。

  • 内容:ChatGPTを利用していないレポートと利用したレポートを比較
  • テーマ:「建築情報学を用いた人・建築・都市のバージョンアップ」について複数の事例・研究を参照した上で,自身が考える高度化や拡張,自身が取り組んでみたいことを述べなさい。(字数:約400字)
  • 被験者:建築系学科 大学1年生 約90名
  • 時期:2023年04月
    • ChatGPT が一般メディアでも多数取り上げられるも,課題での利用には懐疑的だった時期。なお多くの学生はv4ではなくv3を利用した。
  • 順序:未使用でレポートを提出して貰った後日に,使用する課題を出題
  • 辞書:mecab-ipadic-Neologd

ここでは形態素の出現頻度の比較のみ紹介する。QRコードから図をご覧いただきたい。図1は,使用時と非使用時の形態素の出現度数の累積度数の推移を示している。X軸には形態素を出現頻度が高い順に並べており(使用の有無で共通の形態素ではない),Y軸は累積度数を示している。使用することで,出現単語の種類が減少し,上位単語の出現累積割合が早期に高くなったことが読み取れる。次に上位単語の変化をみる。使用しない場合(図2)は,筆者の感覚ではあるが,建築情報学と言う言葉を始めて聞いた1年生らしい単語(CGやゲームに関連)の出現度数が高い。使用した場合(図3)は,建築と情報に関連する試行内容を表現するような単語(スマートシティ・デジタルツイン・デジタルトランスフォーメーションに関連)の度数が高い。さらに使用したことで減少・消失した出現度数が下位の単語の一部を見ると(図4),ノイズと呼べる単語だけではなく,建築・都市に関連する単語(環境問題や産業革命に関連)も消失している。

この結果をまずは「期待」として解釈する。レポート着手時には知らなかった建築情報学のキーワードとも言える単語を知り,その単語を自身で調べ他,対話を重ねたとするならば,新しい概念や単語を知るのと同時に,分野を効率良く俯瞰的に学ぶ自習機会としての効果がChatGPTを使用したレポート執筆には期待できる。

次に「危惧」として解釈する。自身の考えを自身の言葉を用いて言語化せずに,AIに提示された分野で出現頻度が高い単語を形式的に採用しただけの可能性もある。つまりレポートを効率的に提出しただけで,学びが希薄な可能性がある。同等以上に強い危惧は,考え方がAIの出力,前述の仮定にたてば規範に寄り多様性が失われている可能性である。この危惧が該当する場合には,無意識な進行に対して強い自覚が必要であるため「葛藤」を抱えている。一方で,現代社会において,ネット情報の多様化とSNS発展が組み合わさった分散的な偏向が過度に進んでいるならば,規範とする収束は期待とも言える。

図1.使用時と非使用時の形態素の出現度数の累積度数の推移
X軸:出現頻度順に並べた形態素(形態素は共通ではない),Y軸:累積度数

図2.非使用時の出現度数上位の単語と累積度数の推移
X軸:出現度数順に並べた形態素,Y軸:出現度数

図3.使用時の出現度数上位の単語と累積度数の推移
X軸:出現度数順に並べた形態素,Y軸:出現度数

図4.非使用時の出現度数下位の単語の一部

アンケート1

実験1の結果についてのご意見をぜひお聞かせください。
(結果は他の方もご回答も含めてアンケート下部のリンクからご覧いただけます)

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■実験2概要: B)精度の悪い生成AIとの直接的な対話(参照)の検証

次は,前述の意味で精度の悪いAIの生成を直接的に参照した際の人間の変化の検証として,初期の生成AIである敵対的生成ネットワーク(GAN)の一種であるDCGANを用いた実験である。本項には概要のみを示す。QRコード先の図と併せてご覧いただきたい。実験の詳細は途中結果であるが参考文献2)3)でもご覧いただける。

  • 内容:DCGANの生成画像を閲覧して図形を発案した際の拡張性を検証する。
  • テーマ:「〇と△を用いた図案」
  • 被験者:建築系学科 大学生 50名(分類1は20名,分類2は12名)
  • 時期:2022年
  • 手順(図5図6):
    • 描画1:図案を描画して貰う
    • 描画2:生成画像を見て図案を再度描画して貰う。
    • 分類1:描画1と描画2を分類して貰う(一人分を1セットとして複数依頼,分類者は描画者ではない。以下同じ)
    • 分類2:描画1と生成画像を分類して貰う
    • 分類3:描画2と生成画像を分類して貰う

 数値や仮説検定の結果は省略するが,分類1と分類2では明瞭な分類がなされ,分類3では明瞭には分類がなされなかった。この結果は,人が図案の認知を拡張しており,その拡張に生成画像が影響していることを定量的に示唆している。質的には描画1では〇と△をそれぞれ大きくは崩さずに複数配置させた図案が多く,生成画像と描画2では〇と△を崩して合体させたような図案も見られた(図7)。これは依頼文にある「〇【と】△を【用いて】」の【と】と【用いて】の解釈の拡張を示唆している。このようなAIとの対話による人間の思考の拡張への「期待」と「危惧」を後述する。

 「期待」については言うまでもないであろうが,特に言及したい点は,この拡張は実験1と異なる性質として,「人には考えづらいAI独特とも言える思考を獲得できた」可能性を持つことである。これは思考の多様性へ寄与を意味しており,発散時の多様な思考は成果へ寄与も期待できる。

次に「危惧」である。メタ議論になるが,このようなデザインの多様性の拡大の意義が希薄で極論すれば無駄かもしれないことである。先人の知見に対して,AIとの対話による新たな拡張を求めずとも,デザイン・設計は既に十分に多様であり質も高い,と考えることもできる。先人の知見をこのように認識すると,建築学がAIと歩むための主な論点は,現在の話題の中心と思える設計そのものではない危惧が浮かび上がる。現在の建築学・建築が抱える課題はプロセスにあり,AIと共創すべきは,設計行為中のプロセスも含む施工や管理などのプロセスと言えるのではないだろうか。一方でまだ見ぬ自分が好きなデザインに出会いたいという願望は人間の本質・性とも言え,筆者もAIの研究に着手した際からこの想いが強いため「葛藤」を抱えている。読者の皆さまはいかがだろうか。

AIと人の共創の多面性を意識することはますます重要になる。「C)精度の良いAIとの間接的な対話」に関しては「日本建築学会 建築電脳戦」で興味深い作品が公開されている。ぜひ参照していただきたい。特集としては「平野 利樹」氏の前述の建築電脳戦も含めた論考を参照していただきたい。

図5.描画画像と生成画像の例

図6.分類実験の構成

図7.描画画像と生成画像の例

アンケート2

実験2の結果についてのご意見をぜひお聞かせください。
(結果は他の方もご回答も含めてアンケート下部のリンクからご覧いただけます)

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4. 人間の成果(出力)の価値の変化に対して

成果(出力)に対する価格・価値は,同じような身体を有した他者が,能力の獲得も含め多くの意味で自分では困難なプロセスを経て出力したことに対する感謝・尊敬である。この長い間の習慣の中で,困難なプロセスを得ずに類似の出力を可能とするコンテンツ生成AIが,ふわっとした理解で広く社会に浸透した。これにより,ある成果(出力)の高品質さが価格・価値に直結しなくなる可能性がある。この変化に関する検証が実験3である。

■実験3概要: 市場の変化に関する調査

  • 内容:デザインにおける画像生成AI(以下,AI)の利用に関する意識調査
  • 被験者:約190名 建築系学科 大学生,建築実務者
  • 時期:2022年以降,DALL・E 2・Stable Diffusion(v.1.4)・Midjourney(v3) リリース後。生成した絵画の受賞,法的整備と解釈,AIの出来ないことや間違い探し,等が話題になった以降である。非コードでの利用も可能だったが,知っているのみで利用はしたことがない人も多い時期。
  • 方法:オンラインサービスを用いたアンケート
  • 手順:生成画像を用いた生成AIの紹介後にアンケート回答を依頼。

結果一部をQRコード先の図8に示す。これらの4設問は「施主・購入者」の立場として回答いただいたものである。設問は【自社開発ではない】画像生成AIの利用について問う内容である。回答は5段階評価でうかがい「1」がネガティブ(評価が下がる,支払い意思が下がる),「5」がポジティブ(評価が上がる,支払い意思が上がる)である。結果を後述する。

A:建築設計を想定した設問(自身の専門分野)

  • Q1. AIのデザインを設計に取り入れた際の設計への評価
    平均的にポジティブに影響している。
  • Q2. AIのデザインを設計に取り入れた際の設計への支払い額
    平均的にネガティブに影響している。ただしQ1と比して標準偏差が大きい。これは層別化した際に,社会人は学生ほど明瞭にネガティブな傾向ではないことが要因と考えられる。

B:建築設計以外のデザイン全般を想定した設問(自身の非専門分野)

  • Q3. デザイン全般において,AIのデザインをデザインに取り入れた際の評価
    平均的にポジティブに影響しているが,Q1と比してやや低い。
  • Q4. デザイン全般において,AIのデザインをデザインに取り入れた際の支払額
    平均的にQ2よりややネガティブに影響し,Q2よりも標準偏差が小さい。これは社会人のネガティブな傾向がQ2より明瞭なことが要因である。

以上を概観すると,評価にはポジティブに影響するが,支払い額にはネガティブに影響すると考えられる。特徴的なことは,「評価」においては,専門分野より非専門分野に対しての方がややポジティブな影響が強く,「支払い額」においては,専門分野より非専門分野に対しての方がややネガティブな影響が強いことである。つまり,購入者の対象分野に対する専門性が低い場合,評価は上昇するが,支払い額は低下する傾向があると考えられる。購入者の対象分野への専門性は,その分野の従事者ほど高くないことが当然多い。関連して,ChatGPTを通じて,生成AIが安価かつ利用容易な技術として手の中にあり,多くのサービスへ実装が進んでいることを非常に多くの人が認知した。このような現状と傾向に関する期待と危惧を記したい。

はじめに「危惧」である。これは言うまでも無いであろう。建築設計に限らずデザインに対する金銭的な価値が下がることは,筆者としても複雑である。間接的かもしれないが,短期的にはこのような危惧が現実となるだろう。

次に「期待」は,AIとの共創により仕事の成果の差がより埋まり,プロセスに対する価格・価値が強まるという期待である。極論すればプロセスが価格・価値の主体になるかもしれない。長期的には,いわば「人間味」といった提案者の人となりの価値と価格が強まる将来に強く期待を感じている。人間味には,方法,方法の獲得の経緯(大学で学んだのか独学かなど),さらに言えば,生活や価値観・性格,歩んで来た人生,これから歩もうとしている人生,までも含まれるだろう。関連する「對間 昌宏」氏の論考を参照していただきたい。

図8.設問と結果

アンケート3

実験3の結果についてのご意見をぜひお聞かせください。
(結果は他の方もご回答も含めてアンケート下部のリンクからご覧いただけます)

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5. 揺らぐ「実在・現実感の共有」に対して

高精度な生成AIには前述以外の期待と危惧もある。それは,物質として存在しているようだ,自分と同じような身体を持って存在しているようだ,という「現実感の共有」が本格的に揺らぎ始める可能性である。画像・映像だけでなく,自分と同じような生物とのコミュニケーションが実際には異なる主体だった,などもあり得るだろう。「現実感の共有」の揺らぎや減失と聞くと,SF映画のような極端で望ましくない未来の訪ればかり想像しがちである。しかし,現実感の不確かさを契機とする現実の探求が,自己探求を通じたそれぞれの豊かさに結実し,それぞれの現実に対する認知という多様性を認め合う社会の訪れや,建築がますます重要になる未来の訪れも期待できる。このような点については,脳科学・SR(代替現実)の研究を契機に早くから「現実とは?」を思考する「藤井 直敬」氏のインタビューを参照していただきたい。

6. 人間に対する代替可能性,異なる存在の可能性に対して

AIの人間に対する代替には,高次の存在である自覚を持つ人間として危惧を抱く一方で,人間の代替に過ぎないのであれば,という楽観も感じる。これには落胆も感じるが,AIがセンサー・駆動機構を持ち身体性を獲得することや,それを通じて人間の生成物ではなく現象を直接学習すること,人間の代替ではない能力や価値観を持つAIの誕生の可能性が持つ開拓性や高次性には,期待とやはり危惧を感じる。関連するご説明と示唆を複数の異なる視点から賜った。AIの身体については,ロボティクスの観点から「谷口 忠大」氏・施工の関連から「平沢 岳人」氏,高次なAIについては,早くからメタAIを導入済みのゲームデザインの観点から「三宅 陽一郎」氏・都市の観点から「沖 拓弥」氏・地球規模の環境問題の観点から「大岡 龍三」氏,から賜った原稿などに含まれる。ぜひご参照いただきたい。


参考文献

  1. 日本建築学会:AIの利活用に関する特別調査委員会 報告書,2021.03,日本建築学会
  2. 原田真衣, 山田悟史:Deep Learningを用いたデザイン生成AIに対する意識調査と認知拡張の検証, 第44回情報・システム・利用・技術シンポジウム論文集:報告, pp.467-470, 2021.12, 日本建築学会
  3. 原田真衣, 山田悟史:コンテンツ生成AIが見せる拡張的なデザイン -異なる学習構造を持つGANのデザイン合成の比較-, 第45回 情報・システム・利用・技術シンポジウム論文集:報告72-75, 2022.12, 日本建築学会
  4. 原田真衣, 山田悟史:深層学習を用いたコンテンツ生成AIとの共創プロセスにおける中動態,日本建築学会大会学(近畿)学術講演梗概集(情報システム技術), pp.139-140, 2023.09, 日本建築学会