建築情報学会 Fes2023 に参加して

建築情報学会 Fes2023 に参加して

先日に開催された建築情報学会 短期集中型ワークショップ Fes 2023 に研究室の数名が参加しました。
とても大変ながら充実した成長の機会でした。
その様子を5名のメンバーにレポートにして貰ったので,紹介します!
(研究の原稿では無くレポートなので,ほぼ原文のまま+文責本人にて悪しからず)


 

Fes2023

KIM JOONYOUNG(B4)

Fes 2023とは?

 建築情報学会 短期集中型ワークショップは2022年から開催し、今回で2回目を迎えた比較的最近のイベントである。このイベントはそれぞれさまざまな背景を持つ、「社会人」による「THINKING」と「学生」を中心とした「CODING+MAKING」で、建築や情報についての交流を目的としている。

 今回の「Fes2023」では集合住宅をテーマにした「THINKING」が提示された。

「CODING+MAKING」には立命館大学、大阪公立大学、大阪産業大学、日本大学、広島工業大学など、10校から計28名の大学部生と修士課程の大学院生、社会人が参加し、オンラインで一週間「THINKING」で与えられた課題を進めるが、このような背景が他の複数人との短期集中型課題は1週間をほぼすべて投資しなければならないという短所があるが、短い期間に複数人がスケジュールを合わせなければならないという制約により、既存の対外活動より一層深く体系的なコミュニケーションをすることができた。

また、「Fes2023」はオンラインワークショップで全ての作業がオンラインで行われ、それぞれのプレゼンテーションは、東京会場と広島会場で開催されるが、オンラインでも参加できる。新型コロナウイルス状況により、テレワークが活発化したが、再び対面が増える状況で、IT業界や新世代業界ではますますテレワークを重視するようになり、社会人とのオンラインワークショップの経験の機会を得られるという点で、Fes 2023が価値あると思う。

活動について

今回のFes2023では北本英理子准教授の「メタバースに集合住宅を作れと言ったら…」」という「THINKING」をテーマに、本人を含む5人の学生が「CODING+MAKING」を5つのステップに分けて進めた。

まず、メタバースの理解のためにメタバースプログラムであるCluster内でアバターを製作し、色々なメタバースワールドとイベントに接し、以後メタバースワールドを製作した。この過程以降、中間発表を行い、次のステップの実験に向けた意見共有が行われ、このような意見を反映して実験の方向性を定めることとなった。

 各自のルールにより、メタバース内に順次空間を構築していく。その後、このような空間を多角的に観察、分析、考察するという実験が決まるようになった。

 オンラインワークショップを行うために、それぞれの作業物を「Github」というプログラムを通じて共有できる環境を構築し、「Unity」プログラムを利用して実験環境を構築した。その後、17回の空間構築実験を通じてメタバース内に集合住宅のような空間を構築した(図 2,図 3)。

このような空間を体験できるよう、Cluster内に実装した(URL:https://cluster.mu/w/f2271dfa-d276-45e5-8ea1-32336fa4b262)。
Clusterを利用できなくても理解しやすいように映像としても製作した(URL:https://www.youtube.com/watch?v=ekrLSJt2juc)。

最後に

今回のFes2023を通じて、メタバースに関する知識を得ることができたのも良いが、個人的にはオンラインワークショップを進める上で、計画でのコミュニケーションと同じ環境の構築の重要性を知り、その樹立方法を知ることが最も価値があると思う。


 

建築情報学会 短期集中型オンラインワークショップ「Fes2023」

大島 佳奈子(B4)

活動を通して学んだこと

 私は今回、「processing」というプログラミング言語を用いて集合住宅を設計した。この取り組みにおいて行ったことを3点述べる。

 1つ目は、processingを動かすことである。見た目はpythonと似ていたが生成するものやコードの書き方が少し異なっていて慣れるのに少し時間がかかった。しかし、角度を変化させるなどの小さい変化を加えるだけで多様な形が形成されるところが面白いと感じた。Grasshopperと似ているなとも感じた。(図1)

 2つ目は、Twinmotionを用いてprocessingで作成した形を集合住宅らしく表現することである。Processingだけの状態では集合住宅には見えないが、周辺環境やテクスチャの追加などを行うことで人間の手や頭だけでは設計できない集合住宅ができたことが魅力的だった。また、地形と生成物との間に偶然できた空間に様々なオブジェクトを置いてその空間の活用を考えることが楽しかった。(図2,図3)

 3つ目は、初対面の人とグループを組んで1週間という短期間で成果物を出すことである。グループ課題に取り組むことはあったが、初対面の人と行うことは初めてだった。お互いのスキルがあまり分からない状況で課題を進めることに難しさを感じたが、最後には個々が得意なことを担当し役割分担してなんとか形にすることができ、良い経験になったと感じた。以上3点が本活動を通して学んだことである。

活動に関する反省点

 活動に関する反省点を2つ述べる。

 1つ目は、processingの習熟度の低さである。1週間という短さから自分の中で習熟度に見切りをつけてしまったため、processingの理解が不明瞭なままであると感じる。これから少し時間がある時に見直したいと考えている。

 2つ目は、グループメンバーとして発表内容の共有度の低さである。ギリギリまで形にこだわったため、時間がなく、内容把握が不十分であったと感じている。もう少し、グループ内で内容に関する議論も行うべきだったと考える。

運営側への感想・要望

 1週間という期間は社会人や学生のどの人にとってもちょうど良い期間だったと感じた。私たちは、Fes後にグループ内で今回の活動の振り返りをオンラインで行った。その際に、Fesのキックオフの最後にオンラインでも良いのでグループで集まる時間が欲しかったという話が出た。初めにmiroを見るタイミングがバラバラのため、最初にグループ全員でスケジュール合わせをするのが遅くなってしまった。それを改善できたらよりスムーズに進んだのではないかと感じた。

参考文献


 

建築情報学会短期集中型ワークショップ(fes)を経験し得た3つの成長

米光 陸(B4)

特異な形状生成への挑戦

1つ目は、特異な形状生成への挑戦である。「Processing」というコーディングにより特異な形状を生成するソフトウェアを使い、従来の手法では捉えきれない新たな形状の生成に挑戦した。これにより、建築設計における創造力の領域が広がることを体感した。従来の方法では生成されない、これまでにない形状が、プログラムを通じて生まれる瞬間を目の当たりにし、設計の可能性の無限大さを改めて確認することができた。(図1)

AIを活用した建築デザインプロセスの新たな試み

 2つ目は、AIを活用した建築デザインプロセスの新たな試みである。人工知能「Chat GPT」を活用した建築デザインプロセスの新たな試みを行った。これは、AIが設計プロセスをどのようにサポートできるか、特に集合住宅の設計プロセスをジェネレイティブな方法で進めることに挑戦した。設計のアイデアをAIにより生み出し、それを具体的な形状や空間に結びつけるという一連の流れを体験し、これまでとは全く異なる新しい設計プロセスを経験することができた。

さらに、最先端のツール「Firefly」や「Stable Diffusion」を使うことで、現在のAIの能力とその未来的な適用範囲について深い洞察を得ることができた。(図2)

チームワークと実践的活用への深化・展望

3つ目は、チームワークと実践的活用への深化・展望である。このワークショップには、多くのチームが参加した。各チームが異なるテーマに取り組み、それぞれがどのように課題を解決するか、どのような手法を用いるかを観察することで、建築情報学の実践的な活用とその建築設計への具体的な影響について理解を深めることができた。私たちのチームでは、「ジェネレイティブな設計手法」を提案した。(図3)AIの最新技術を積極的に取り入れることで、AIによる設計思考を推進し、従来の建築家の役割を再定義する可能性を示した。最終レビューでは、我々の提案に対し教授陣からは否定的な意見はなく、どんな提案に対しても建設的な意見をいただき、とても価値ある経験となった。

これらの経験は私の建築設計へのアプローチを一層深めることができるだろう。そして、このワークショップで得た知識や洞察を活かし、卒業設計や卒業研究に役立てていこうと考えている。

参照サイト


 

Fes2023感想

古山 大成(B4)

活動概要

今回のFesにおいて、私は杉原先生の指導の下で活動を行った。活動の内容は、processingを用いたモジュールを階層的な反復により成長するエージェントによって集合住宅を生成するというものだった。(図1)

活動内容とその感想

その活動の中で、私は主にプログラミングの段階を担当した。コードの基幹部分は提示され、「どのように生成するか」という部分を書けば良いという状態ではあったが、このコードにはお題である「階層的な反復による成長」を実現するために普段馴染みのない概念の変数が用いられており、その理解に苦労した。土曜日にチュートリアルを受けてから自分でコードを書くなどして理解に努めたが、おおよその理解ができたのは月曜日の晩になってだった。

また、理解してから改めて考えてみると、このコードが得意と思われる生成パターンは殆どが先生のサンプルで提示されており、一から書くとなるとそれ以外となるので苦労した。私はせっかくならサンプルの改造ではなく一から自分で書いてみたいと思い、サンプルになかった形状の中から円柱をコンセプトとして選んでコーディングを進めた。サンプルに無い(恐らくコードが完全に得意とは言えない)形状だったのでコードにおける多少の工夫は必要だったが、どうにか試作までこぎつけることができた。(図2)

火曜日に試作した生成物を班員に見せたところ、評価がよかったのでこの路線でコーディングを進めた。班員の意見を元に改良し、形状をより理想的なものに少しずつだが近づけていった。(図3,図4)生成パターンをサンプルの改良ではなく自分で組んだのでコードの改良がし易かったのは、コードを書き換えて改良していくうえで役に立った。この点は多少コードで無理してもオリジナルの形状にこだわった利点だと感じた。また、このコードの「無理をした」部分も、後のフィードバックで出た作りたい形状を実現するための解決策となり、結果的にこのコードの長所の一つになってくれたと思う。

だが木曜日に形状の細部の修正を行ったところ、生成物の全体形状が微妙に変わってしまう不具合がでてしまった。敷地へ配置する際の座標や個数は他の班員がすでに決定しており、私自身もその配置を気に入っていたので元の全体形状と細部の修正を両立するのに苦労した。結果的になんとか修正は実現したものの、やや力押しの解決だったため、もっとコードの理解が必要だった、または全体形状が少し変化しても問題ない段階で修正を済ませておくべきだったと感じる。

活動全体を通して

活動全体では、コンピューテショナルデザインにおける変数の重要性を再確認した。今回特殊な変数を使用したことで、変数の幅広さと可能性を感じることができた。また、今回の成果物において、評価変数の弱さが指摘されたため、今後は設計変数と平行してこの評価変数も軽視せずに考慮していきたい。

今回コーディング以外の仕事は他の班員にだいぶ任せていたが、コーディングに関しては今回提示されたものに対して完全ではないものの理解を深めることができ、コンピューテショナルデザインにおけるプログラミングの一例に触れることができた。また、グループで制作を進める中で、私自身は建築学生の中では建築デザインに疎いため、生成物の良し悪しの判断や改良方針、プレゼン等は他の班員に任せていた。活動の中で、この建築家とプログラマーの分業とも言うべき体制がもっとあってもいいのではとも感じた。



建築情報学会短期ワークショップ(fes)を通して

大本 和尚(B4)

ビジュアルプログラミング的設計手法

まず、Fesを通して建築情報学系に対する視野が大きく広がりました。この経験は、建築と情報学が交差する領域における自分の理解を深めるだけでなく、新しいツールと技術を活用することで、実践的な経験を積む機会を与えてくれました。
 最初に取り組んだのは、Processingでした。Processingはビジュアルプログラミング言語であり、コードを書くことで図形やアニメーションを生成することができます。Processingを用いて、反復的にモジュールを操作するプロセスを通じて、人間の思考だけでは具現化できない形状を創造することが可能であることを認識しました。また、これまで考えもしなかったような新たなデザインの可能性を開くきっかけとなりました。私自身はプログラミング経験は多少あったつもりでしたが、Processingはまったく触ったことがなかったため、最初はコードを読むことすら難しかったですが、最終的には自分の想定を超えた造形が出てくるようなコードを書くことが出来るようになりました。(画像1)

生成AIの活用とその可能性

次に、私は生成AIやAdobeFirefly、Stable Diffusionといった最先端のツールを活用しました。AdobeFireflyはAIを用いてテキストから画像を生成する新しいツールで、塗りつぶし機能を使用することで、人間の恣意性によらない画像生成が出来ます。一方、Stable Diffusionはテキストから詳細な画像を生成するための深層学習モデルで、テキストプロンプトによって導かれる画像を生成することも可能です。またpoint-eと呼ばれるImage to 3Dで3Dオブジェクトを生成出来る深層学習ツールを通してモジュールの生成を行いました。
 実際には3Dオブジェクトが余りうまく生成されないこともあり、生成AIの出力した3Dオブジェクトをそのまま集合住宅のモジュールとするのは人間の取捨選択が必要であると感じました。建築設計におけるAIの活用法を探って見た結果、現状のAIではまだ空間を認識できていないように感じ、人間の余地はまだあるのではないかと思いました。(画像2)

グループ活動を通して学んだこと

最後に、私は新たな人々と一緒に問題を解決する経験を得ました。プロジェクトの途中で、議論がうまく進まなかったり、ツールに対しての理解が不十分で意図に沿わないものが出来てしまうことが多々ありました。また既にある予定との兼ね合いで時間をどれだけFesに費やせるかというところで私は非常に悩みましたが、最終的にはグループのメンバーで協働して成果物を作ることが出来ました。Fesを通して、共に建築情報学を盛り上げる仲間と基礎知識を身に着けることが出来、また従来の設計に対する問題提起を行うことが出来たと思います。非常にいい経験になりました。(画像3と動画)


参考文献