執筆者:小野葵(M1), 宇佐美要成(M1), 田中雅也(M1)
一昨年および昨年に引き続き、BKC学園祭において中央噴水を活用したメディアインスタレーションを実施いたしました。ご助力いただいた関係者の皆さまに、心より御礼申し上げます。
R2030推進のためのGPSPグラスルーツ実践支援「STEAM教育としてのBKC HACK(代表:山田悟史)」の一環として行った活動・作品を紹介します。小野, 宇佐美, 田中が紹介します。
概要
- Core メンバー:小野葵(M1), 宇佐美要成(M1), 田中雅也(M1), 遠藤亜久里(M1)
- 題目:AURORA(Architectural Unrecordable Radiance Of Rendered Artifacts)
- 主旨(作品):
フィジカルのようなデジタル,デジタルのようなフィジカル,そして,実際には,想起を喚起する何かであれば,何でもいい。何故ならこのAI時代に,主体や定義は普遍的に自身が持つものでなく,刹那的に与え合い変化する概念だからである。
そしてその異化により創発が現在の新たな「美」の根源・源流である。高度な受容器である身体を駆使して全身で多次元な感覚を認知することで,無限に豊かな表情を想起し得る。
そんな自然現象のようで明らかに人が思想した人工現象でありながら,自然現象をも超えた多様性と契機をもつフィジタルな存在と現象の創造,新たな美学の顕在的な提示を目指しました。 - 出展期間:2025/11/16から11/23
- 出展先の企画名:BKC祭り
- 取り組み期間:2025/04/01 ~ 2025/11/30
- 助成:
- R2030推進のためのGPSPグラスルーツ実践支援「STEAM教育としてのBKC HACK(代表:山田悟史)」
- 大規模な出展を念頭にした分野横断的な学びの主体性喚起を意図した学習・研究として助成を頂き実施させて頂きました。
フィジタルとデジタルの横断,美学や技術の横断はもちろん,予算の管理と執行・関係各所との調整・施工・安全の確保,までを主体的に学ぶ機会になりました。
- 参照用:小野葵, 宇佐美要成, 田中雅也, 遠藤亜久里, 建築情報学研究室+有志(岡真琴, 水田薫花, 川邉凌久, 萩原皐太, 児島絢梧, 竹下歩夢), 山田悟史:AURORA(Architectural Unrecordable Radiance Of Rendered Artifacts), 2025年11月16日にBKC祭に出展(構想・製作期間 4月から11月),http://satoshi-bon.jp/2026/01/13/aurora/
当日の様子







このような現象を様々な曲面形態・波・積層パターン・材料で検討した。
▼試作実験体

(以上小野執筆)
デジタルファブリケーション・3Dプリンター
本プロジェクトでは、3Dプリンターを用いた樹脂成型を採用している。その背景には、現代のデジタルファブリケーションに対する批評的な問題提起がある。
本来、3Dプリンティングは、伝統的な「工芸」が持つ属人性と、近代的な「型枠生産」が持つ工業性の間に位置する、第三の製造手法と捉えられる。しかし現状では、省人化や造形の自由度、素材の多様性といった利便性を享受しつつも、単に既存手法を代替する「モノ」の出力装置として役割が限定されてはいないだろうか。
本プロジェクトは、そうした機能的な代替手段としての利用を超え、デジタルファブリケーションが社会において担うべき真の役割と、その適切な実装形態を再考する試みである。
投影面、スクリーンとしての役割
具体的なアプローチとして、FDM方式(熱溶解積層法)固有の造形特徴である「積層痕」に着目した。
通常、平滑性が求められる場面では欠点とされる積層痕だが、透明樹脂においては光の屈折や散乱を引き起こす光学的な素子として機能する。本プロジェクトでは、この積層痕を単なる痕跡としてではなく、光を制御する「機構」として再定義した。
3Dプリンター特有の幾何学的な自由度を活かしつつ、意図した光の効果(トリガー)を生み出すための最適な形状と、それを生成するプログラム(アルゴリズム)の検討を行った。
試行
構想段階では、大きく2つの方向性を検討した。
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平面パネル展開案 3Dプリントした平面パネルを噴水敷地全体に敷き詰め、上部からの投影を行う手法。しかし、平面的な配置では空間的なインパクトに欠け、広大な敷地をカバーするには膨大な枚数が必要となるため、コストおよび施工労力の観点から採用を見送った。
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球体配置案 敷地中心に球体を配置し、内部や側面から投影を行う手法。象徴性は高いものの、3Dプリンターによる真球の造形は技術的難易度が高い。加えて、「浮遊感」を演出条件とする中で、球体を支える躯体の存在感がノイズとなり、デザインを阻害するという課題が残った。
以上の検討を経て、球体案のブラッシュアップにより「シリンダー(円筒)案」が浮上した。シリンダー形状であれば、内部に躯体を隠蔽することが可能であり、かつ噴水の水面から立ち上がるような連続性のあるデザインを実現できる。よって、本プロジェクトではこのシリンダー案を採用することとした。
【シリンダーモデルの採用と技術的課題の解決】 円形の噴水敷地に対し、全方位からの鑑賞が可能であること、および内部の単管構造を隠蔽できる利点から「シリンダーモデル」を採用した。一方で、この形状には1. 接合部の意匠性確保、2. 最下層への荷重集中、3. レーザー照明の照射範囲という3つの課題が存在した。
構造的アプローチ(課題1・2に対して): リブ構造を採用することで解決を図った。リブに荷重支持機能を持たせることで構造的強度を確保しつつ、接合部を意匠として統合することで、表面への後加工を不要とするディテールを実現した。
光学的アプローチ(課題3に対して): シリンダーのテーパー形状(すぼまり方)について実験的検証を行った。当初は上部が広がる形状が受光面積において有利と仮定したが、実際には入射角が鈍角となり、狙いとしていた独自の屈折現象が生じにくいことが判明した。 この結果に基づき、最終形状は上部がすぼむフォルムを採用。さらに、内側の層には屈折の重なりを促進する「高周波のノイズ(激しい凹凸)」を、外側の層には鑑賞時の視認性を考慮した「低周波のノイズ(緩やかな凹凸)」を与えることで、構造と光学特性の両立を果たした。



▼(参考)上から平面パネル展開案、左下から球体配置案



印刷の制御方法
実装にあたり、Rhinoceros/Grasshopperを用いた一貫した生産システムを構築した。 本アルゴリズムは、シリンダー全体を3Dプリンターのビルドボリューム(造形範囲)に合わせて自動分割し、各パーツの接合に必要なリブ(補強・糊代)を生成、さらにG-codeの出力までをシームレスに行うものである。
一方、実際の生産工程においては、デジタルファブリケーションの課題も浮き彫りとなった。1パネルあたりの出力時間は6〜10時間を要し、「省人化」という一般的特性とは裏腹に、人的リソースの集中投下が不可欠であった。 最終的には7台のプリンターをフル稼働させ、3交代制による24時間体制を敷くことで、全280枚のパネル生産を3週間で完遂した。
▼制御方法の段階図

パネルの接合方法
下のように接合、荷重受けの用途を兼ねるリブを自動生成するアルゴリズムを作成した。リブにはインシュロックで水平方向の自由を制限し、溶接をすることで上下層の自由を制限した。実際にリブに荷重が逃げることで、意匠面を欠損することなく会期を全うした。
▼左から接合部分、接合を行っている作業の様子


(以上宇佐美執筆)
施工について
投影面の形状と投影手法の決定を受け、今回は印刷物の設置台とレーザー設置用のタワーを設計しました。昨年度は木材を使用しましたが、本年度は耐久性を重視し、人が乗っても安全な単管パイプを採用しています。 制作工程としては、まず写真のように土台を組み上げ、仮設足場を設置してレーザーハウスを固定しました。その後、高さのある印刷物を組み上げるために足場を再構成し、設置作業を行いました。 印刷物は全部で10段あり、各段の接合には「はんだごて」を使用し、素材を熱で溶かして接着(溶着)させています。
▼左上から図面、完成形。左下から土台段階、仮足場段階、組み立て段階。





(以上田中執筆)
投影計画について
オブジェをスケールアップするにあたり、ランプ光源では必要な照度を確保できないため、レーザー光を採用した。投影面の上方1m位置にレーザーを3台設置することで、オブジェ全体に十分な光が届くことを事前に確認し、この条件を前提としてレーザーハウスの設計および配線計画を進めた。
レーザーハウスの側面は、オブジェの延長として一体的に知覚されるよう、オブジェと同一のテクスチャを用いた。土台部分には、排気を確保しつつ必要な強度を満たすため、通気性を備えたエキスパンドメタルを採用した。また、屋根は視認性を抑える目的から、透明な中空ポリカとした。配線計画については、使用可能な電源がコンセント3口(各1000W)に限定されていたため、規定を踏まえた上で安全かつ効率的に構成した。
▼左から配線計画、レーザーハウス内部の配線


今後について
本プロジェクトでは、二重円筒ランプにおいて内側の層が三次元的に揺らいで見える視覚現象をスケールアップし、「噴水スケール」において再構築することができた。今後の展望としては、以下の2点ある。
①インタラクティブ性について
鑑賞にとどまらず、訪問者が空間体験としてより深く関われるようなインタラクティブ性を追求したい。また、来場者から「これからどうなるのか」「何か変化があるのか」といった声が多く寄せられたことから、本作には単なる鑑賞物にとどまらず、時間的な展開を含むストーリー性が求められていると感じた。
②輝度調整による視覚効果について
当初はレーザー光に加え、内側から照明光を照射することで、外側の層が透過し内側の層が視認できる視覚現象の生成を試みていた。しかし、照明の輝度が高すぎたため、外側の層が透けず、意図した効果は得られなかった。その後、照明の位置や輝度を再調整した結果、目標としていた視覚現象を再現することができたため、今後は人目に触れる場所で改めて検証に挑戦したい。
(以上小野執筆)